
ミームコインは、ネットで広がったネタや人物・文化を題材にした暗号資産を、まとめて呼ぶ言い方です。
最初のミームコインと言われるドージコインは、2013年にBilly Markus氏とJackson Palmer氏が、柴犬の画像のネタを題材に冗談として作りました。
値段は、話題やコミュニティの盛り上がりに、売買できる場所・注文の厚さ・発行量や保有の状況が重なって動き、短い間に大きく上下することがあります。
「ミームコイン」は、法律や技術で決まった分類の名前ではありません。
この記事では、国内の取引所でも扱われているドージコイン・ペペ・トランプ氏のコインの3つを、主な例にします。
最初のミームコインと言われるもの、ほかのブロックチェーンの上で作られたもの、有名人の名前やイメージを題材にしたものと、成り立ちがそれぞれ違うからです。
国内の取引所などでつくる業界団体(日本暗号資産等取引業協会、JVCEA)も、各コインの説明書を公開しています。
その説明書では、ドージコインは「記録者への対価・代償として発行される暗号資産」、ペペとトランプ氏のコインは「〜の上で発行されたトークン」と書かれ、どれにも「ミーム」という言葉は出てきません。
下の図の「ブロックチェーン」は、取引の記録を、ネットワークに参加するたくさんのコンピューターで共有して残していく仕組みです。
ミームコインは、ネットで広がるネタ(ミーム)を題材にした暗号資産を指す呼び名で、決まった定義はありません。
似た呼び名の「草コイン」とは見方が違い、作られ方にも2つの種類があります。
「ミーム」は、ネットでまねされ、少しずつ形を変えながら広がっていく画像・言い回し・キャラクターのことです。
ミームコインは、そうしたネタや、話題の人物・文化を名前や見た目に使った暗号資産を指して使われることが多い言葉です。
米国の証券取引委員会(SEC)の企業金融局の職員が2025年2月27日に出した声明も、ミームコインを「ネットのミーム、キャラクター、時事、流行から着想を得た暗号資産」の一種と説明しています。
この声明は職員の見解で、法的な効力はないとされています。
決まった定義はないため、何をミームコインと呼ぶかは、書き手や資料によって少しずつ違います。
「草コイン」も俗称で、時価総額(1枚の値段×出回っている枚数で出す、コイン全体の値段)が小さい、あまり知られていない暗号資産を指して使われることが多い言葉です。
ミームコインは「何を題材にしたか」、草コインは「どれくらいの規模か」という、別の見方の呼び名です。
小さなミームコインは両方に当てはまりますが、ドージコインのように広く知られたミームコインは、ふつう草コインとは呼ばれません。
「ミームトークン」は、ほかのブロックチェーンの上でトークンとして出たミームコインを指して使われることがあります。
これも技術の分類ではなく、ミームコインとほぼ同じ意味で使われることもあります。
ドージコインは、自分専用のブロックチェーンを持っています。
一方、シバイヌ(SHIB)とペペ(PEPE)はイーサリアムの上、トランプ氏のコイン(TRUMP)はソラナの上で発行された「トークン」です。
トークンは、すでにあるブロックチェーンの上に、決まった手順で新しく作れるコインのことです。
同じ名前や同じ略称(ティッカー)のトークンを、別の人が作ることもできます。
そのため、名前が同じでも中身が別物ということが起こります(確かめ方は後の「名前を見かけたら確かめる4点」で説明します)。
人が集まる理由は、ひとつではありません。
よく挙がるものを5つ並べます。
1. 急に値上がりした話が、SNSで一気に広がる
「何十倍になった」という話は、ネタとして面白いので、仕組みの説明より速く広がります。
話を見た人が買いに来ると、それ自体がまた話題になります。
2. 有名人の名前が出る、題材になる
知られた人がコインの名前を出したり、その人の名前やイメージを題材にしたコインが出たりすると、ふだん暗号資産に関心のない人にも名前が届きます。
トランプ氏のコインは、その大きな例です(この見出しの最後で説明します)。
3. 1枚の値段が小さく見えて、手を出しやすく感じる
ミームコインには、発行枚数が何百兆枚というものがあり、1枚あたりの値段がとても小さく見えます。
ただ、1枚の値段は、割安かどうかの目安になりません。
何枚が発行・流通していて、全体でどれくらいの価値で取引されているかを合わせて見る必要があります。
たとえばペペは約420兆枚あるため、1枚あたりの値段は小さく見えやすくなっています。
4. ネタを分かち合う楽しさがある
ミームコインは、同じネタを面白がる人たちの集まり(コミュニティ)と一緒に育つことが多いです。
画像や言い回しを共有すること自体が楽しみになり、それが名前を広げます。
5. 誰でもすぐ作れるので、次々に新しいものが出る
トークンは決まった手順で作れるため、専門の知識がなくても作れるサービスもあります。
話題になる出来事があるたびに、それを題材にした新しいトークンが次々に作られます。
ただし、出てくる数が多いほど、すぐに売買されなくなるものや、だます目的で作られたものも混ざります。
トランプ氏のコイン「オフィシャルトランプ(TRUMP)」の公式サイトは、このコインを「Trump Meme」と表示しています。
JVCEAの資料によると、発行が始まったのは2025年1月17日で、トランプ氏の2度目の大統領就任(1月20日)の3日前でした。
誰がコインを作ったのか、トランプ氏本人がどこまで関わったのかは、公式サイトには書かれていません。
公式サイトは、CIC Digital LLCをトランプ・オーガナイゼーション(The Trump Organization)の関連会社と説明し、Fight Fight Fight LLCと合わせて80%を持っていると表示しています。
この80%には3年間かけてロックを外していく予定が付いていて、これは売る予定を示すものではありません。
TRUMPの公式サイト自身も、偽のサイトや偽のトークンがあると注意を呼びかけています。
使い道があるかどうかはコインごとに違いますが、値段の大きな動きは使い道だけでは説明できません。
値段は、話題・売買できる場所・注文の厚さなど、いくつかの条件が重なって動きます。
ミームコインはすべて「使い道がない」わけではありません。
ドージコインの公式サイトは、ドージコインは最初から「お金」として使われてきたと説明しています。
JVCEAの資料でも、ドージコインの主な利用目的は「送金、決済、投資」と書かれています。
それでも、ドージコインは今も代表的なミームコインとして扱われることが多く、暗号資産の情報サイトCoinGeckoの「Meme」の分類にも入っています(2026年10月14日時点)。
公式サイトは「使い道がない」という見方に反論し、「お金」であることを強調しています。
冗談として始まったコインをどう呼ぶかは、立場によって違います。
一方、ペペの公式サイトは、ペペには本来の価値も、お金のリターンへの期待もなく、娯楽のためだけのものだと書いています。
同じサイトは、題材のカエルのキャラクター「Pepe the Frog」や、その作者とは関係がないとも表示しています。
どちらにしても、値段の大きな動きは、使い道の多さだけでは説明しにくいのがミームコインの特徴です。
値段を動かすものは、ひとつではありません。
| 条件 | どういうことか | 例 |
|---|---|---|
| 話題・コミュニティ | 注目が集まると買いたい人が増え、注目が移ると減る | SNSでの拡散、有名人が話題にする |
| 売買できる場所 | どの取引所で売買できるか。扱う場所が増えたり減ったりすると、売買できる人が変わる | 取扱いの開始・終了 |
| 注文の厚さ | 並んでいる注文の量。少ないと、少しの売買で値段が大きく動く | 下の図 |
| 発行量と保有の偏り | 何枚あるか、少数の人が多く持っていないか | 大口の持ち主の売却 |
| 設定を変える権限 | 作った側が後から枚数や設定を変えられるか | 変えられる場合は、その判断で中身が変わる |
どれか1つを見ただけでは、値段が高いか安いか、これから動くかどうかは決められません。
この中の「注文の厚さ」を、図で説明します。
取引所では、「この値段なら売る」「この値段なら買う」という注文が、値段の順に並んでいます。
売りの注文がたくさん並んでいれば、大きな買い注文が来ても、安い値段の注文から順に売買が成立するので、値段は少ししか上がりません。
売りの注文が少ないと、大きな買い注文が、高い値段の注文まで一気に買い上げてしまい、値段が大きく上がります。
売るときも同じで、買いの注文が少ないと、思っていたより低い値段でしか売れないことがあります。
図の棚は、取引所の「板」と呼ばれる注文の一覧にあたり、□1つが1つの売り注文です。
実際の注文は量も値段の刻みもばらばらで、DEX(分散型取引所。運営会社を通さず、ブロックチェーン上のプログラムで売買する仕組み)では別の方法で値段が決まります(最後の技術的な補足で説明します)。
話題が集まったときに一気に上がり、話題が去ると売りたい人に対して買う人が足りなくなる、という動きは、この仕組みでも起こります。
大きな違いは、発行の決まりと、その決まりを誰がどう変えられるかです。
ビットコインは、発行される枚数の上限が2,100万枚と決まっています。
ミームコインは「上限がない」と言われることがありますが、これもコインごとに違います。
ドージコインには上限がなく、ブロックが1つ作られるたびに1万枚ずつ増えます。
ペペは約420.69兆枚、TRUMPは10億枚で、どちらもJVCEAの資料では発行できる枚数を変えられないとされています。
ビットコインは自分専用のブロックチェーンを持ち、ルールを変えるには、ネットワークに参加する人たちの広い合意が必要です。
トークンのミームコインは、ほかのブロックチェーンの上に作られ、作った人が決めた設定で動きます。
設定を後から変えられるかどうか、変えられるなら誰が変えられるかは、トークンごとに違います。
起こりうることは、コインそのものの性質から来るものと、取引の相手やサービスから来るものに分けると整理しやすくなります。
話題しだいで大きく動く。
注目が集まると短い間に大きく上がることがあり、注目が移ると大きく下がることもあります。
売りたいときに、希望の値段で売れない。
注文が少ないと、少しの売買で値段が大きく動き、思った値段で売れないことがあります(上の図のとおりです)。
大口の持ち主が売ることがある。
発行された枚数の多くを少数の人が持っていると、その人たちが売ったときに値段が大きく下がることがあります。
ラグプル(資金の引き揚げ)。
流動性プールを使うDEXでは、売買のための資金を「流動性プール」に預けて取引を成り立たせています。
作った側などが主な流動性プールから資金を引き揚げると、売るのがとても難しくなったり、少しの売買でも値段が大きく動いたりします。
最初からこれを狙って作られるトークンもあります。
偽物・同じ名前の別物をつかまされる。
有名なコインと同じ名前・同じ略称の、別のトークンが作られることがあります。
登録していない海外の業者と取引してしまう。
日本に住む人を相手に暗号資産の売買をする業者は、金融庁・財務局への登録が必要です。
金融庁は、登録をせずに日本の人を勧誘した海外の業者に警告を出し、名前を公表しています。
ただし、警告の一覧に載っていないことは、安全という意味ではありません。
国内の業者が、扱いをやめることがある。
BITPOINTは2026年9月4日、ペペ(PEPE)や「オフィシャル トランプ(TRUMP)」などの取扱いをやめると発表しました。
BITPOINTのサービスでは、購入は10月7日に終わり、売却と出金は10月28日13時までです。
期限の後も口座に残った分は、BITPOINTが「適当と認める時期および方法」で売って円にするとしています。
告知の時点では、2026年11月中をめどに市場価格で売る予定とされていました。
BITPOINTは理由を、今後のサービス提供の方針を検討した結果としています。
1社が扱いをやめたことは、そのコインの安全性や価値、ほかの会社で扱われているかどうかを決めるものではありません。
使っている会社が扱いをやめるときは、自分で売ったり、ほかへ出金したりできるのは期限までです。
何もしなかった分がどう扱われるかは、その会社の告知で確かめてください。
国内の登録業者がミームコインを扱うことはありますが、それは金融庁がコインの価値を保証するという意味ではありません。
業界団体JVCEAの一覧(2026年10月13日更新)で数えると、ビットコインに「〇」が付いている事業会員(協会に入っている取引所など)は30社でした。
この記事で例にしたミームコインは、いちばん多いドージコインでも15社です。
金融庁の「暗号資産交換業者登録一覧」には、登録業者が扱う暗号資産についての注意書きがあります。
それによると、一覧の暗号資産は、業者の説明にもとづいて法律上の暗号資産の定義に当てはまることを確かめたものにすぎません。
同じ一覧には、金融庁・財務局がこれらの暗号資産の価値を保証したり、すすめたりするものではないとも書かれています。
国内の登録業者で売買できることは、そのコインの将来性や安全性、値段が妥当であることを意味しません。
JVCEAは、事業会員が扱う暗号資産の一覧を公開しています。
2026年10月13日に更新された一覧から、この記事で例に挙げたミームコインと、ビットコイン・イーサリアムに「〇」が付いている事業会員の数を数えました。
ビットコインは30社、イーサリアムは29社、ドージコインは15社、シバイヌは10社、ペペは8社、TRUMPは4社でした。
この一覧が対象にしているのはJVCEAの事業会員で、国内の登録業者すべてではありません。
また、BITPOINTの例のように、各社の告知と一覧の更新の時期がずれることがあるため、実際にいま取引を始められる会社の数は、この数より少ないことがあります。
社数は扱っている会社の多さで、安全性や将来性の順位ではありません。
なお、暗号資産の取引で出た利益は、2026年10月時点では原則として雑所得に区分されます(国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」)。
SNSや知らないサービスから、ミームコインの購入や送金をすすめられたときに確かめられることを4つ並べます。
1. 公式の発信か
検索結果や広告、DM、SNSのリンクだけで「公式」と判断しないでください。
そのコインが以前から公表している複数の公式の発信、扱っている業者の公式ページ、金融庁の登録一覧を照らし合わせます。
2. ブロックチェーンとアドレスが合っているか
同じ名前・同じ略称の別物があるので、どのブロックチェーンの、どのアドレスのトークンかを確かめます。
TRUMPの公式サイトも、買う前に公式のアドレスを確かめるよう書いています。
3. 発行量や保有の表示を、どこまで信じられるか
発行量の数字は、資料によって「発行済み」「流通量」など数え方が違います。
アドレスごとの保有の一覧も、取引所や流動性プールのアドレスが混ざるので、実際の持ち主ごとの量を示すものではありません。
4. 相手の業者は登録されているか
金融庁の「暗号資産交換業者登録一覧」で、名前を確かめます。
この4点は、だまされる可能性を減らすための確認です。
どれも、そのコインを買ってよいかや、安全かどうかを保証するものではありません。
この節では、本文で使った発行量の数字の取り方、資料によって数え方が違う理由、DEXで値段が決まる仕組みを説明します。
ペペとシバイヌは、イーサリアムのトークンの決まり(ERC-20)の「totalSupply」という関数で、いまの総供給量を読めます。
2026年10月14日、イーサリアムのブロック26,188,632の時点で読みました。
2つのノード(ethereum-rpc.publicnode.com と eth.drpc.org)から読んだ値は一致しました。
ペペは約420兆6,899億枚でした(コントラクト 0x6982508145454Ce325dDbE47a25d4ec3d2311933)。
シバイヌは約999兆9,823億枚でした(コントラクト 0x95aD61b0a150d79219dCF64E1E6Cc01f0B64C4cE)。
TRUMPのソラナ版は、ソラナのgetTokenSupplyで、スロット456,721,381の時点で約9億9,999万枚でした(アドレス 6p6xgHyF7AeE6TZkSmFsko444wqoP15icUSqi2jfGiPN)。
ドージコインは自分専用のブロックチェーンを持つコインで、ERC-20のtotalSupplyのような関数では読めません(確かめるには別の方法が必要です)。
この記事では、JVCEAの資料の値を使いました。
JVCEAの2026年10月13日更新の資料では、発行済み数量は155,047,706,384枚で、1ブロックごとに10,000枚増えるとされています(ブロックごとに増えるので、上の3つとは時点が違う値です)。
ペペの総供給量は約420.69兆枚ですが、JVCEAの資料の「発行済み数量」は413,772,473,088,271枚で、数字が一致しません。
総供給量だけからは、なくなった分・ロックされた分・保管用の口座の分を、流通している分とそうでない分に分けることはできません。
流通量は、集計する人がどう定義するかにも左右されます。
上のたとえ話の図は、取引所の注文の一覧(板)の仕組みです。
DEXの多くは、2種類のトークンを預けたプールの残高の比率で、自動的に値段を決めます。
プールの残高が小さいと、少しの売買で比率が大きく変わり、値段が大きく動きます。
ラグプルで流動性プールの資金が引き揚げられると、この残高が小さくなるため、売るのがとても難しくなります。
本記事は暗号資産の仕組みに関する情報提供を目的としたものであり、特定の暗号資産の購入・売却を推奨したり、投資を勧誘したりするものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本は保証されていません。投資の判断はご自身の責任で行ってください。記載内容は執筆時点(2026年10月14日)で確認できた情報にもとづいており、その後の状況の変化を反映していない場合があります。
この記事は まず知る.com 編集部(運営:合同会社東洋DEX)が書いています。運営者と編集方針