
「海外の取引所のほうが銘柄が多い」「手数料が安い」と聞いて、口座を作ろうか迷っている人もいると思います。
先に結論を書きます。
日本の居住者を相手に暗号資産の売買や交換のサービスをする業者は、日本で登録を受ける必要があります。
「違法かどうか」でいうと、資金決済法で罰せられるのは、登録を受けずに営業した業者のほうで、使った人ではありません(2026年10月時点)。
ただ、違法でないことと、預けたものが守られることは別の話です。
登録を受けた業者には、預かった暗号資産を業者自身の分と分けて管理し、業者がつぶれたら利用者が先に返してもらえる、といった法律の決まりがかかります。
日本で登録を受けていない業者には、こうした日本の登録制度による監督や守りが及びません。
ただし、登録を受けた業者に預けていても、値下がりや業者の破綻、送金の誤りで損をすることはあり、銀行の預金のような保険があるわけでもありません。
迷ったら、口座を作る前に、その業者が金融庁の一覧に載っているかを確かめるのが最初の一歩です(確かめ方は「使う前に確かめる2つのこと」にまとめました)。
図のように、分かれ目は会社の所在地ではなく、日本で登録を受けているかどうかです。
「違法かどうか」を考えるときは、法律が誰に何を求めているかを分けて見る必要があります。
2026年7月には法律の改正も成立しているので、いまの決まりと、これから変わる決まりを順に見ます。
暗号資産の売買や交換、利用者の暗号資産の管理などを仕事として行うことを、法律では「暗号資産交換業」と呼びます。
資金決済法は、暗号資産交換業を、国(内閣総理大臣)の登録を受けた者だけに認めています。
登録を受けていない外国の業者が、日本にいる人に売買などを勧めること(勧誘)も禁じています。
登録を受けずに暗号資産交換業を行った者は、3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金、またはその両方の対象になります(2026年10月時点)。
金融庁の説明でも、日本に住む人を相手にこの仕事をするなら、日本の法令にもとづく登録が要る、という扱いです。
ここまでの決まりで罰則の対象になるのは業者で、使った人を罰する決まりではありません。
使う側の法的な扱いは取引の中身によっても変わりうるので、個別の判断が必要なときは、弁護士などの専門家に確かめてください。
金融庁は利用者に向けて、取引の前に相手が登録を受けているかを確かめ、無登録の業者と取引を行わないよう呼びかけています。
2026年7月15日、暗号資産の決まりを資金決済法から金融商品取引法(金商法)へ移す改正法が成立し、7月23日に公布されました。
移る日は、公布から1年以内に政令で決めることになっています(2026年10月時点で日付は未定)。
移ったあとは、登録を受けずに暗号資産の取引の仕事をする業者への罰則が、拘禁刑3年から10年に重くなる予定です。
使う人に関わる決まりも1つ入ります。
登録を受けていない業者が、国内の登録業者が扱っていないなどの条件に当たる暗号資産を売った場合、その売買の契約は原則として無効になります。
どの暗号資産が当たるかの細かい条件の一部は、これから政令で決まります。
ただし、これは金商法に移る日から始まる見込みの決まりで、2026年10月時点ではまだ始まっていません。
国内の登録業者が扱っている暗号資産を買った場合は、この決まりの対象になりません。
また、契約が無効になることと、海外の業者から実際にお金を取り戻せることは、別の話です。
このように、法律の決まりは業者に向けたものが中心ですが、「違法ではない」と「安全」は同じ意味ではありません。
使う人にとっての大きな違いは、預けたお金や暗号資産がどう守られるかにあります。
ここでは「国内か海外か」ではなく、「日本で登録を受けているか」で比べます。
海外の会社でも、日本で登録を受ければ、日本の決まりの中に入るからです(登録の条件は最後の技術的な補足にまとめました)。
表のように、登録を受けた業者には、預かった暗号資産の管理や破綻したときの扱いについて、法律の決まりがあります。
例えば、業者は預かった暗号資産を自分の分と分けて管理し、その状況について毎年、公認会計士か監査法人の監査を受けなければなりません。
業者が破綻した場合、利用者には、分けて管理された暗号資産などから優先して返してもらう権利があります。
ただし、これは盗まれた分や値下がりした分を全額補償する決まりではありません(くわしくは暗号資産はなぜ盗まれる?3つの手口と、取引所に預けた分の守られ方)。
金融庁は、登録の際に、うその表示や大げさな広告の禁止、預かった資産の分別管理、トラブルのときの窓口の設置などの態勢を整えることが求められる、と説明しています。
そのうえで、登録を受けていない業者は、こうした態勢があるかを当局が確かめられず、登録業者と同じ態勢が整っていない可能性が高い、としています。
なお、レバレッジ(預けたお金の何倍まで取引できるか)や、約款の言語、もめたときの裁判の場所などの条件は、業者や商品ごとに違うので、それぞれの公式の説明で確かめる必要があります。
暗号資産の取引で生じた利益は、原則として雑所得として扱われます(国税庁)。
円に換えたときだけでなく、ある暗号資産を別の暗号資産と交換したときも、手放した暗号資産で買ったものとして所得を計算します。
計算の資料について、国税庁は国内の暗号資産交換業者に、1年分の購入・売却の数量と金額を書いた「年間取引報告書」の交付を依頼しています。
手元にない場合は、業者に再交付を頼むよう案内されています。
国外の業者は、この依頼の対象に入っていません。
取引の履歴や独自の報告書を出せる業者もありますが、円の金額が日本の申告に合う形で出ているとは限りません。
国外の業者で取引した分について、国税庁は、銀行口座の入出金や、取引の履歴と取引相場から金額を確かめる方法を挙げています。
ですから、使うなら、取引の記録を自分で残しておくことが大切です。
金融庁には、登録を受けていない業者とのトラブルの声が多く寄せられています。
あわせて、「無登録」と「詐欺」の関係も整理しておきます。
金融庁の注意喚起「無登録業者との取引は要注意!!」(2026年10月7日更新)によると、登録を受けていない業者とのあいだでは、次のようなトラブルの声が多く寄せられています。
こうしたトラブルが起きても、日本で登録を受けていない業者には、日本の登録制度による監督や守りが及びません。
業者がつぶれたときに先に返してもらえる権利など、日本の法律にもとづく仕組みは使えません。
金融庁は、警告書を出した無登録の暗号資産交換業者の名前や所在地を、一覧で公表しています。
一覧に載っているのは、警告書を出した時点で、登録を受けずに暗号資産交換業を行っていると確かめられた業者です。
詐欺だと認めたという意味ではなく、いまも営業していることを示すものでもありません。
反対に、一覧に載っていなくても、登録を受けずに営業している業者はありえます。
また、詐欺をはたらく側が、登録を受けた業者の名前をかたることもあります。
そのため、口座を作る前の確認は、次の2つに分けて行う必要があります。
1つ目は、その業者が日本で登録を受けているかです。
2つ目は、いま自分がやりとりしている相手が、本当にその業者かです。
金融庁の暗号資産交換業者登録一覧に、その業者の名前があるかを見ます。
業者の名前や電話番号で調べたいときは、金融庁の金融事業者一括検索が便利です。
あわせて、金融庁の無登録で暗号資産交換業を行う者の名称等についてで、警告を受けていないかも確かめます。
登録一覧に名前がなければ、警告の一覧に載っていなくても、日本で登録を受けた業者ではありません。
金融庁は、登録を受けた業者の名前をかたる無登録業者もいるとして、注意を呼びかけています。
業界団体の日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)も、会員の名前をかたった勧誘やサイトに注意するよう呼びかけています。
ですから、登録一覧に名前があることを確かめても、それだけで相手を信じてよいことにはなりません。
SNS で勧誘してくる人や、送られてきたリンク・アプリは、そのまま使わないようにします。
登録一覧に載っている業者の名前から公式サイトを自分で探し、サイトの URL やアプリの提供元が、その業者のものと一致するかを確かめます。
不審な勧誘を受けたときは、消費者ホットライン(188)で近くの消費生活相談窓口を案内してもらえます。
詐欺と思われるトラブルは、最寄りの警察に相談するよう、金融庁は案内しています。
業者から、サービスの終了や制限の知らせが届くことがあります。
慌てて操作すると、送金の誤りやなりすましで、別の損につながることがあるので、次の順で確かめます。
送金は、いったん送ると取り消せないことが多い操作です(暗号資産の送金を間違えたらどうなる?戻らない理由と、送る前に確かめる3つ)。
取引所に置かずに自分で持つ方法もありますが、その場合は鍵を自分で守ることになります(仮想通貨ウォレットの選び方)。
税金については、売却やほかの暗号資産との交換、買い物への使用をした場合に、所得の計算が必要になることがあります。
申告が必要かどうかなど、個別の事情は税務署や税理士に確かめてください。
出金を断られた、連絡が取れないなど、トラブルになったときは、金融庁の金融サービス利用者相談室(詐欺的な投資に関する相談ダイヤル)に相談できます(電話 0570-050588・平日10時〜17時・2026年10月時点)。
ここでは、本文で触れた条文と、改正の段階、金融庁の一覧の見方をまとめます。
条文はe-Govの資金決済に関する法律で読めます(2026年10月29日に確認)。
改正法の名前は「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」(令和8年法律第64号)です。
※表は横にスクロールできます
| 日付 | できごと |
|---|---|
| 2026年7月15日 | 成立 |
| 2026年7月23日 | 公布 |
| 2026年8月12日 | 金商法の無登録業に対する罰則の引き上げ(拘禁刑5年→10年)と、証券取引等監視委員会の犯則調査の権限の追加が先に施行 |
| 公布から1年以内(政令で決める日) | 暗号資産の決まりが金商法へ移る。暗号資産の無登録業者は、資金決済法の拘禁刑3年から、金商法の拘禁刑10年の対象に。無登録業者の売付けの原則無効(171条の15)もこの日から |
改正後の171条の15で無効になるのは、無登録業者が「未公表暗号資産」を売った場合などの、顧客がその暗号資産を手に入れる契約です。
未公表暗号資産とは、国内の登録業者が扱っておらず、値段や情報を簡単に得られる暗号資産として政令で定めるものにも当たらない暗号資産のことです。
ただし、業者の側が、顧客の知識や財産の状況などに照らして保護に欠けないこと、または不当な利得にあたらないことを証明すれば、無効にはなりません。
金融庁の説明資料は、これを「原則無効として立証責任を転換」と説明しています。
金商法に移ると、「暗号資産交換業者」は「暗号資産取引業者」という呼び名に変わります。
資料は金融庁の国会提出法案のページ(法律案要綱・説明資料)と、2026年7月29日の報道発表で読めます。
改正後の条文は、e-Govの金融商品取引法の施行前の版でも読めます(2026年10月29日に確認)。
警告の一覧は、国内の業者と、海外に所在する業者(所在不明を含む)に分かれています。
1行は1回の警告で、同じ業者に何度も警告を出していれば、その回数だけ行があります。
行の数は、いま営業している業者の数でも、危ない業者の数でもありません。
載っている名前や所在地は警告した時点のもので、いまの名前や所在地とは限らない、と金融庁は注意書きしています。
海外の取引所を使うかどうかを決める前に、「その業者は日本で登録を受けているか」を確かめることから始めてください。
日本の登録制度の守りが及ばない部分があることを分かったうえで、使うか使わないかを自分で決めることが大切です。
本記事は、暗号資産交換業の登録制度と、日本で登録を受けていない業者を使う前に確かめる観点に関する情報提供を目的としたものであり、特定の暗号資産・取引所・サービスの利用や、購入・売却を推奨したり、投資を勧誘したりするものではありません。法律の解釈や、個別の取引が法律上どう扱われるかについての助言ではありません。個別の判断が必要な場合は、弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。暗号資産は価格変動が大きく、元本は保証されていません。投資の判断はご自身の責任で行ってください。記載内容は執筆時点(2026年10月)で確認できた情報にもとづいており、法令の施行や制度の変更により、その後の状況と異なる場合があります。
この記事は まず知る.com 編集部(運営:合同会社東洋DEX)が書いています。運営者と編集方針