
イーサリアムの次のアップグレード「グラムステルダム(Glamsterdam)」が、2026年10月6日、試験用のネットワークで始まりました。
先に結論を書くと、取引所や自分のウォレットでETHを持っているだけなら、することは何もありません。
ETHを交換したり、別の場所へ移したりする必要はなく、残高もそのままです。
「ETHをアップグレードしてください」と言ってくる人がいたら、それは詐欺です。
変わるのは、イーサリアムが一度に処理できる量を、安全に増やすための仕組みです。
試験用のネットワークでは、1つのブロックに入れられる処理の量の上限を、約3.3倍の2億まで上げて試しています。
ただし、本番のネットワークでいつ始まるのか、上限をいくつにするのかは、まだ決まっていません。
手数料も、必ず安くなるわけではありません。
ふつうのETHの送金の料金は変わらず、新しく作ったウォレットへの最初の送金などは高くなる予定です。
この記事では、何が変わるのかと、手数料・時期の見通しを順に説明します。
取引所に預けている人も、自分のウォレットで持っている人も、することはありません。
イーサリアムの公式サイトも、ETHを変換したりアップグレードしたりする必要はないと説明しています。
アップグレードのように、ネットワークのルールを変えることを「ハードフォーク」と呼びます。
ハードフォークと聞くと、コインが2つに分かれた過去の出来事を思い出す人もいるかもしれません。
今回のアップグレードは、ネットワークに参加しているコンピュータがソフトを入れ替え、全員で新しいルールに移るためのものです。
公式サイトの説明でも、残高は変わらず、いま持っているETHはアップグレードの後もそのまま使えるとされています。
新しいコインを配ったり、古いETHを新しいETHに取り替えたりする手続きはありません。
準備が要るのは、ノードやバリデータを自分で動かしている人です。
ノードとは、イーサリアムの記録を持ち、取引がルールどおりかを確かめているコンピュータのことです。
バリデータは、ETHを預けて、ブロックを提案したり確かめたりする役の参加者です(ステーキングの仕組み)。
この人たちは、本番の前に、新しいルールに対応した版のソフトへ更新する必要があります。
取引所のステーキングを使っているだけなら、更新は取引所の側で行います。
グラムステルダムは、イーサリアムが一度に処理できる量を増やすための変更を、まとめたアップグレードです。
2025年12月のフサカ(Fusaka)に続くもので、予定されている変更は18件あります。
中心になるのは「ePBS」と「BAL」という2つの変更です。
どちらも、処理を増やしても、ネットワークが中身を確かめる作業に追いつけるようにするためのものです。
このほかに、手数料の計算の見直しも入っています。
イーサリアムは、約12秒ごとに取引をまとめて記録します。
このまとまりを「ブロック」と呼びます。
1つのブロックに入れられる処理の量には上限があり、これを「ガスの上限」と呼びます(ガスは、処理の量を数える単位です)。
本番のネットワークのガスの上限は、いま6,000万です。
グラムステルダムは、この上限を安全に上げるための準備です。
ブロックをトラックの1便に、ガスの上限を1便に積める量にたとえると、次のようになります。
ePBSは、荷物を積む係と、便を出す係の受け渡しを、ネットワークのルールに組み込むものです。
これにより、ブロックの中身をネットワーク全体に行き渡らせるのに使える時間が、約2秒から約9秒に延びると、イーサリアムの公式サイトは説明しています。
BALは、ブロックに「どの記録に触ったか」の一覧を付けるものです。
一覧が先にあれば、重ならない取引を見分けて、同時に並べて確かめられます。
実際には人が手分けするのではなく、1台のコンピュータの中で並べて処理します。
ガスの上限は、アップグレードの瞬間に切り替わるのではなく、1ブロックごとに少しずつ上がるルールです。
当サイトが試験用のネットワーク「Sepolia(セポリア)」の記録を読むと、6,000万から2億に届くまで約12時間かかっていました。
Sepoliaの2億は、本番でもそのまま使うと決まった値ではありません。
本番でいくつまで上げるかは、まだ発表されていません。
時間がかかった理由などの細かな話は、最後の技術的な補足にまとめています。
ふつうのETHの送金の料金は、変わりません。
新しく作ったウォレットに初めてETHを送るときなどは、使うガスが約10倍に増える予定です。
混み合ったときに手数料が上がりにくくなる方向には働きますが、必ず安くなるわけではありません。
アドレスとは、ETHを受け取るための口座番号のような文字列です。
いまと同じ21,000のガスで送れるのは、ETHが入っている(または送金したことがある)ふつうのウォレットのアドレスへ、ETHだけを送る場合です。
一方で、ETHが入っておらず、送金したことも無いふつうのウォレットのアドレスへ送ると、受け取る側の記録を新しく作る分が上乗せされ、使うガスは204,600になります。
新しく作ったウォレットのアドレスが、その代表です。
高くなるかどうかは、送る側ではなく送り先で決まります。
すでに使っているウォレットから送っても、送り先が新しく作ったウォレットなら上乗せされます。
上乗せされるのは、そのアドレスが初めてETHを受け取るときの1回だけで、2回目からはふつうの送金と同じです。
2026年10月6日の基本手数料で計算すると、約2.8円が約28円になります。
トークン(イーサリアムの上で作られた別の暗号資産)を送るときも使うガスが増えることがあるので、送る前にウォレットに表示される見積もりを確かめてください。
料金の数字は予定の仕様によるもので、本番までに変わることがあります。
基本手数料は、ブロックが半分より混んでいると上がり、空いていると下がる仕組みです。
上限が上がれば、同じ量の取引が来ても、基本手数料は上がりにくくなります。
ただし、使う人が増えれば混み合うことはあり、いまより下がるかどうかは、そのときの使われ方しだいです。
本番の基本手数料は、すでに2025年の夏ごろから低い水準が続いています(ガス代はなぜ安くなった?)。
イーサリアムの公式サイトでは、本番のネットワークでの開始は「2026年第4四半期(10〜12月)の予定・日程は未定」とされています。
この予定は、2026年8月6日に更新されたページのものです。
アップグレードは、試験用のネットワークで順に試してから、本番のネットワークで始まります。
今回は、10月6日にSepoliaで始まりました。
次の試験用のネットワーク「Hoodi(フーディ)」と、本番の日付は、まだ決まっていません。
試験の途中で問題が見つかれば、予定は後ろにずれることがあります。
参考までに、前回のフサカでは、Sepoliaで始まってから本番まで約7週間でした。
今回も同じ間隔になるとは限りません。
日付が決まると、イーサリアム財団のブログ(blog.ethereum.org)で発表されます。
過去のアップグレードでは、国内の取引所が、本番の前後にETHの入出金を一時的に止めたことがあります。
たとえばビットバンクは、2025年5月のペクトラ(Pectra)のとき、イーサリアムのネットワークを使う入出金を約1日止めました。
このときも、暗号資産の売買は通常どおりできると案内されていました。
本番の日付が決まったら、使っている取引所のお知らせを確かめておくと安心です。
イーサリアムの公式サイトは、ETHを「アップグレード」するように言ってくる人は、あなたをだまそうとしていると注意を呼びかけています。
アップグレードのニュースが出ると、それに便乗した詐欺が出やすくなります。
「新しいETHに交換が必要です」「期限までに手続きしないと使えなくなります」といった連絡は、全て詐欺と考えてください。
こうした連絡は、偽のサイトに誘導して、ウォレットをつながせたり、取引に署名させたりしようとします。
署名とは、ウォレットで取引を承認する操作のことです。
署名すると、ウォレットの中の暗号資産を相手に動かされることがあります。
秘密鍵や、ウォレットを復元するための単語(シードフレーズ)を入力させようとするものもあります。
ETHを持っている人が、アップグレードのためにすることはありません。
盗まれる手口は、暗号資産はなぜ盗まれる?で詳しく説明しています。
なお、ノードやバリデータを動かしている人に必要なのは、ソフトの更新だけで、ETHを動かすことではありません。
ここからは、予定されている変更の中身と、記事の数字の出し方を補足します。
Glamsterdamに入る予定の変更は、メタ文書のEIP-7773にまとめられています。
2026年10月7日時点で、予定に入っているEIPは18件です。
このほか、ノードどうしの通信の変更と、参考扱いの文書が並んでいます。
主なものは次のとおりです。
※表は横にスクロールできます
| EIP | 内容 |
|---|---|
| EIP-7732(ePBS) | ブロックを提案する人と、中身を組み立てる人の受け渡しを、プロトコルのルールにする |
| EIP-7928(BAL) | ブロックの中で触ったアカウントと保存場所、処理後の値の一覧をブロックに付ける |
| EIP-2780 | 取引の基本料金21,000を、実際の作業ごとの料金に分ける |
| EIP-8037 | 新しい記録(アカウント・保存場所・コード)を作る料金を上げ、別の物差しで数える |
| EIP-8038 | 記録を読む・書き換える料金を見直す |
| EIP-8261(参考) | ガスの上限の目安を、時期ごとの予定表としてソフトの設定に書けるようにする |
イーサリアムのノードは、取引を実行するソフトと、どのブロックを正しい記録とするかを決めるソフトの、2つを組み合わせて動いています。
グラムステルダムは、この2つの変更の名前を合わせたものです。
取引を実行する側の「アムステルダム」は、2022年に開発者の会議が開かれた都市の名前から取っています。
決める側の「グロアス(Gloas)」は、星の名前から取っています。
これまで、ブロックの中身の組み立ては、専門の組み立て役(ビルダー)が行い、プロトコルの外の中継役を通じて提案者に渡すのが一般的でした。
ePBSでは、提案者がビルダーの「この中身を出す」という約束をブロックに入れ、ビルダーが後から中身を公開します。
提案者への支払いもプロトコルが扱うので、中継役を信頼する必要が減ります。
合意の確認と、取引の中身の確認が分かれ、中身を確かめる時間を長く取れるようになります。
EIP-7732の本文では、今は投票の締め切り(ブロックの開始から4秒)までに中身も確かめる必要があるのに対し、ePBSの後は、次の提案者に6秒、ほかのバリデータに9秒の確認の時間ができると説明されています。
本文の「約2秒から約9秒」は、これとは別に、ethereum.orgがデータを行き渡らせるのに使える時間(伝播ウィンドウ)として示している数字です。
中身が時間どおりに公開されたかは、別の委員会(ペイロード適時性委員会)が確かめます。
BALは、ブロックの中で触ったアカウントと保存場所、取引ごとの処理後の値をまとめた一覧です。
ノードはこの一覧を使って、ディスクからの読み込みや取引の確認を並べて行い、状態の計算も効率よく進められます。
処理後の値が入っているので、取引をやり直さずに最新の状態にそろえることもできます。
EIP-2780は、一律だった取引の基本料金21,000を、署名の確認・アカウントの読み書き・送金などの部品に分けます。
既存の通常のアカウント(EOA)へETHだけを送る場合は、部品の合計が12,000+3,000+6,000で、いまと同じ21,000です。
送り先がコントラクトなら実行する分が加わり、EIP-7702で委任を設定したアカウントなら24,000以上になります。
存在しないアカウントへ送る場合は、新しいアカウントを作る分として、状態ガス183,600(120バイト×1バイトあたり1,530)が加わります。
存在しないアカウントとは、残高・送金の回数(nonce)・コードのどれもが0や空のアカウントです(EIP-161・EIP-8037)。
EIP-8037は、新しい記録を作る料金を「状態ガス」として別に数えるもので、送る人は実行のガスと状態ガスの合計を払います。
ブロックの混み具合は、実行のガスと状態ガスのうち多い方で測り、基本手数料もそれに合わせて動きます。
EIP-8038は、記録の書き換え(STORAGE_WRITE)を2,800相当から10,000に上げるなど、読み書きの料金を見直します。
本文の「ふつうのウォレットのアドレス」は、コードも委任の設定も無いアドレスのことです。
委任の設定(EIP-7702)は、ウォレットのアドレスにプログラムの働きを持たせる仕組みで、一部のウォレットが使っています。
トークンだけを受け取ったウォレットのアドレスも、ETHの残高が0で、そこから送金したことが無ければ、存在しないアカウントに当たります。
トークンの送金で使うガスがどれだけ増えるかは、トークンのプログラムと操作によって違います。
グラムステルダムの後の基本手数料の動きは、利用の量と、ガスの上限、どんな処理が多いか(実行のガスと状態ガスのどちらが混むか)の組み合わせで決まります。
なお、イーサリアムの公式サイトには、EIP-2780で送金が最大71%安くなるという説明が残っていますが、2026年10月7日時点のEIP本文とは合いません。
ガスの上限は、アップグレードで決まる値ではなく、ブロックを作る側の設定で決まります。
1つのブロックで動かせる幅は、前のブロックの上限の1,024分の1未満です。
6,000万から2億まで、毎ブロック限度いっぱいに上げると、1,234ブロック(約4.1時間)かかります。
EIP-8261は、上限の目安を時期ごとの予定表としてソフトの設定に書き、その時期が来たら自動で目安を切り替えられるようにする提案です。
予定表は推奨で、ルールを変えるものではなく、目安と違う上限のブロックも有効です。
料金の見直し(EIP-8037)は、1ブロックの上限を1億5,000万と置いて計算されています。
Sepoliaでは、開始から2億に初めて届くまで約11時間50分かかりました。
全てのブロックが上げられる限りまで上げていれば約4時間で届く計算なので、その約3倍の時間です。
イーサリアム財団の告知によると、一部のソフトは、設定を変えなければ6,000万を目指したままになります。
上げる設定にしていないバリデータがいたことが、理由の1つとして考えられますが、どれだけ効いたのかは確かめていません。
Sepoliaの記録は、2026年10月7日に公開のノード(publicnode)から読みました。
開始のブロック(11,856,337)から285ブロックおきに上限を読み、初めて2億になったブロックを二分探索で探しました。
主なブロックは、別のノード(Tenderly)でも同じ値でした。
※表は横にスクロールできます
| ブロック番号 | 時刻(日本時間) | ガスの上限 |
|---|---|---|
| 11,856,336 | 10月6日 22:53:24 | 60,000,000 |
| 11,856,337 | 10月6日 22:53:36 | 60,000,000 |
| 11,858,617 | 10月7日 6:52:00 | 130,780,528 |
| 11,859,758 | 10月7日 10:41:00 | 199,999,809 |
| 11,859,759 | 10月7日 10:41:12 | 200,000,000 |
開始から2億までは3,422ブロック、42,456秒(約11時間48分)でした。
本番の基本手数料は、2026年10月6日の日本時間0時以降の最初のブロック(26,126,921)から、300ブロックおきに24ブロックを読み、中央値を取りました。
中央値は0.338 Gweiで、2つのノード(eth.drpc.org・publicnode)で同じ結果でした。
本番のガスの上限は、2026年10月7日時点で6,000万でした。
イーサリアム財団の告知(Glamsterdam Testnet Announcement)と、ethereum.orgのグラムステルダムのページ(日本語・英語)を読みました。
EIP-7773・7732・7928・2780・8037・8038・8261は、GitHubのEIPリポジトリの本文を2026年10月7日に確認しています。
取引所の入出金の停止は、ビットバンクの2025年5月8日のお知らせによります。
アップグレードのニュースを見たら、まずは「自分がすることは無い」と覚えておけば十分です。
そのうえで、本番の日付が発表されたら、使っている取引所の入出金のお知らせを確かめてみてください。
グラムステルダムの中身・料金の数字・時期は、2026年10月7日時点の予定で、本番までに変わることがあります。本記事の円の目安は、仮の価格と1日の基本手数料を置いた説明用の計算で、実際の支払額ではありません。本記事は暗号資産の仕組みに関する情報提供を目的としたものであり、特定の暗号資産やサービスの利用・購入・売却を推奨したり、投資を勧誘したりするものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本は保証されていません。投資の判断はご自身の責任で行ってください。記載内容は執筆時点(2026年10月)で確認できた情報にもとづいており、その後の状況の変化を反映していない場合があります。
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