
イーサリアムの「レイヤー2」と呼ばれるチェーンのうち、BlastとAbstractの2つが、運営を終えると発表しました。
チェーンは、暗号資産の残高や取引を記録している土台のことです。
「期限までに移さないと取り出せなくなる」という一文を見て、自分は関係あるのか気になった人もいるかもしれません。
先に結論を書きます。
国内の取引所の口座の中だけで暗号資産を持っている人は、原則として、自分で移す操作をする必要はありません。
取引所が関係する案内を出すかどうかは取引所しだいなので、気になる場合はお知らせを見るか、サポートに問い合わせてください。
同じETHでも、イーサリアム本体に置いているか、BlastやAbstractという別のチェーンに移しているかで、扱いが変わります。
メタマスクやLedgerなど自分のウォレットで持っている人は、その資産がBlastやAbstractの上にないかを確かめてください。
使った覚えがなくても、自分のアドレスを2つのチェーンのエクスプローラーで検索すれば分かります(やり方は後で説明します)。
見つかった場合は、公式の案内で期限と移し方を確かめます。
Blastは10月26日まで、いつもの画面から引き出せます。
Abstractは12月15日に止まり、それまでに移していない資金は取り出せなくなると運営が発表しています。
自分がどれに当たるかは、次の質問に順に答えると見分けられます。
どの質問にも当たらなければ、今回の2つのチェーンの対象になっている可能性は低いと考えられます。
気になる場合は、このあと説明するエクスプローラーで残高を確かめられます。
この記事は、2026年10月13日時点の両チェーンの公式発表と公式の手順書をもとに書いています。
期限や手順は変わることがあるので、操作する前には必ず公式の案内を開いてください。
まず、自分の暗号資産が「どこにあるか」で分けて考えます。
同じ暗号資産でも、取引所の口座の中にあるか、自分のウォレットにあるかで、やることが変わるからです。
取引所で買って、そのまま口座に置いている人は、原則として、自分で移す操作をする必要はありません。
口座の残高は、取引所が預かって管理しているもので、自分でBlastやAbstractに置いたものではないからです。
ただし、取引所が特定のネットワークでの入出金を止めたり、扱う暗号資産を変えたりすることはあり得ます。
案内を出すかどうかは取引所しだいなので、気になる場合はお知らせを見るか、サポートに問い合わせてください。
Blastには「BLAST」という同じ名前のトークン(チェーンの上で発行された暗号資産)があります。
取引所の口座でこうしたトークンを持っているだけなら、Blastのチェーンの上に資産を置いていることにはなりません。
この場合も、通常は自分で移す操作の対象ではありません。
Ledgerのようなハードウェアウォレット(暗号資産を管理する専用の機器)やメタマスクで、取引所から送ったETHを持っている人もいます。
ETHがどのチェーンの上にあるかは、ウォレットの種類ではなく、送ったときに選ばれたネットワークで決まります。
多くの場合はイーサリアム本体ですが、取引所や人からBlastやAbstractのネットワークで送られていれば、自分で移した覚えがなくても、そのチェーンの上にあります。
同じアドレスが、イーサリアム本体でもBlastやAbstractでも使えるためです。
自分のウォレットで持っている人は、次の見出しの「残高の確かめ方」で一度調べておくと確実です。
メタマスクなどのウォレット(暗号資産を自分で管理するためのアプリ)には、どのチェーンを使うかを選ぶ「ネットワーク」の設定があります。
ここをBlastやAbstractに切り替えて、送金やアプリの利用をしたことがある人は、対象の可能性があります。
そのチェーンの上に、残高が残っていないか確かめてください。
見落としやすいのが、この場合です。
Abstractには、メールやパスキー(スマホの顔認証などで本人確認する仕組み)で作れる「Abstract Global Wallet」というウォレットがあります。
Abstractの上のゲームやNFT(デジタルのアイテムや作品の持ち主を記録したもの)のアプリでは、このウォレットで登録していることがあります。
その場合、自分ではチェーンを選んだ覚えがなくても、Abstractを使っていたことになります。
Blastにも、ブラウザやスマホで使うBlast独自のアプリがあり、公式はその中の残高も移すよう呼びかけています。
確かめる先は、運営の公式の発表と、公式の窓口だけにします。
終了の発表に合わせて、偽の移行サイトや、運営を名乗るメッセージが出回りやすいからです。
BlastはX(旧Twitter)の公式アカウント(@blast)で、2026年10月2日に終了を発表しました。
AbstractはXの公式アカウント(@AbstractChain)で、2026年10月6日に発表しています。
チェーンの上の残高は、「エクスプローラー」という、取引の記録を誰でも見られるサイトで確かめられます。
公式のドキュメントに載っているエクスプローラーは、Blastが「blastscan.io」、Abstractが「abscan.org」です。
自分のアドレス(ウォレットの口座番号にあたる、0xで始まる文字列)を入れると、そのチェーンでの残高や記録が出ます。
メタマスクやLedgerのアドレスは、イーサリアム本体でもBlastやAbstractでも同じものが使われるので、そのまま入れて調べられます。
Abstract Global WalletやBlast Mobileは、メタマスクなどとは別のウォレットなので、使っていた場合はそれぞれのアドレスでも調べます。
トークンやNFTは、ETHの残高とは別の欄に出ることがあります。
残高も取引の記録も出なければ、入れたアドレスは、そのチェーンでは使われていません。
ただし、ここで分かるのは入れたアドレスのことだけです。
別のアドレスで持っているものは、この検索には出てきません。
アプリの中で管理されているもの(ゲームの中のアイテムや、受け取っていない報酬など)も、ここには出ないことがあります。
記録はあるのに残高が0のときも、アプリに預けたままのものがないか確かめてください。
使っていたアプリがあれば、その案内を見るか、サポートに問い合わせてください。
Abstractの公式発表は、偽の移行サイトや、運営を名乗るDM(個別のメッセージ)に注意するよう呼びかけています。
検索の広告やDMのリンクから開かず、公式アカウントや公式ドキュメントからたどってください。
ウォレットの復元フレーズ(ウォレットを元に戻すための12〜24個の単語)は、運営やサポートに教えるものではありません。
だまし取られる手口は、暗号資産はなぜ盗まれる?で詳しく書いています。
2つのチェーンは、期限も、期限を過ぎたときの扱いも違います。
Blastは、いつもの画面から引き出せる期限を2026年10月26日としています。
運営は、10月26日を過ぎても資産は引き出せるとしています。
ただしその場合は、いつもの画面が使えず、上級者向けの操作が必要になります(イーサリアムの上にあるブリッジのプログラムを、自分で直接呼び出す操作です)。
その手順は、期限までに公開すると発表されています。
慣れていない人は、期限内に済ませておくのが無難です。
また、発表の時点では、約1週間は引き出しを止めるとしていました。
Blastは、利用者がブリッジに預けたETHを、Lido(ETHを預けて報酬を得るサービス)に預けて運用する作りになっています。
金庫のETHを外に預けている状態なので、引き出しに応じる前に、まずLidoから呼び戻す必要があります。
Lidoの公式の案内では、呼び戻すには順番待ちがあり、通常でも1〜5日ほどかかるとされています。
そのあと、引き出しの待ち時間を24時間に短くして再開する予定です。
再開しているかは、公式の画面で確かめてください。
Abstractは、2026年12月15日にチェーンを止めます。
運営は、この日までに移していない資金は取り出せなくなると発表しています。
移す窓口として、公式の移行ページ(migrate.abs.xyz)と、公式のブリッジ(native-bridge.abs.xyz)が案内されています。
公式のブリッジを使う場合は、約3時間の待ち時間があるとされています。
運営は、早めに移すよう呼びかけています。
どちらのチェーンも、期限の日の何時までかと、どの国の時間かは、発表に書かれていません。
ぎりぎりにせず、数日の余裕を持って済ませておくと安心です。
ここで、レイヤー2とブリッジの仕組みを簡単に見ておきます。
仕組みが分かると、なぜ「移す」手続きが要るのかが分かります。
イーサリアムそのもの(本体)は、「レイヤー1」とも呼ばれます。
本体の上で直接やり取りすると、混んでいるときは手数料(ガス代)が高くなりがちです。
そこで、取引をイーサリアムの外でまとめて処理し、結果をイーサリアムに書き込む仕組みが作られました。
これが「レイヤー2」です。
BlastもAbstractも、このレイヤー2として作られたチェーンです。
ガス代が下がった理由は、イーサリアムのガス代はなぜ安くなった?で書いています。
レイヤー2で使う資産は、多くの場合、「ブリッジ」という仕組みを通って本体から入ってきます。
本体のETHをブリッジに預けると、レイヤー2の上で同じ量のETHが使えるようになります。
逆に、レイヤー2から本体に戻すときも、ブリッジを通ります。
お店にたとえて、資産の動きを図にすると次のとおりです。
本体に戻すときは、レイヤー2での引き出しの記録を本体の側で確かめてもらってから、金庫から受け取る流れになります。
Blastの公式の手順書でも、引き出しは「レイヤー2で始める→本体で記録を証明する→待つ→本体で受け取る」の順になっています。
チェーンが止まるというのは、レジ(レイヤー2)を運営が動かさなくなるということです。
レジが止まったあとも金庫から受け取れるかは、チェーンの作りと運営の対応しだいです。
たとえでは表せない点もあります。
記録をどう確かめるか、運営が止まっても自分で引き出せるかは、チェーンごとに作りが違います。
BlastとAbstractでも、仕組みと引き出しの条件は違います(違いは最後の技術的な補足にまとめました)。
実際の期限、移す経路、期限後に取り出せるかは、それぞれのチェーンの公式の案内で決まります。
移す操作をする前に、流れと、つまずきやすい点をまとめます。
公式のブリッジで本体に戻すときの流れは、大まかに次のとおりです。
まず、エクスプローラーで、そのチェーンに残高があるかを確かめます。
次に、手数料用のETHを、レイヤー2と本体の両方に用意します。
そのうえで、公式の窓口で引き出しを始め、届くまで待ちます。
チェーンによっては、最後に本体の側で「受け取る」操作が必要です(Blastは必要です)。
お金の動きは、前の節の図の「帰り」の部分にあたります。
移す操作では、レイヤー2と本体の両方で手数料(ガス代)がかかります。
Blastの手順書では、Blastの上に少しのETHを残し、本体の側にも手数料用のETHを用意するよう案内しています。
残高を全部引き出そうとすると、手数料が払えずに止まることがあります。
Abstractの公式ブリッジは約3時間、Blastは普通のウォレットでETHを引き出す場合、手順書の上では始めてから1日あまりかかります。
Blastでも、USDBやBlast Mobile、契約でできたウォレット(複数人で管理するウォレットなど)は、手順と時間が変わります。
Blastの手順書では、途中で画面を閉じても、続きから再開できるとされています。
ゲームの中のアイテム、預けて増やすサービス、まだ受け取っていない報酬などは、ウォレットの残高とは別に、アプリの中で管理されていることがあります。
公式のブリッジで移せるのは、基本的に自分のウォレットに入っているものです。
そのため、まずアプリの中から自分のウォレットに出し、それからブリッジで本体へ移す、という2段階になります。
Abstractの運営は、Abstractの上のアプリが別のチェーンへ移るのを手伝うとしています。
アプリごとに対応が違うので、使っていたアプリの案内を見るか、サポートに問い合わせてください。
ETH以外のトークンやNFTは、公式のブリッジでそのまま移せるとは限りません。
Blastの公式の手順書が扱っているのは4種類だけで、受け取るときに別のトークンに変わるものもあります(詳しくは最後の技術的な補足)。
スマホのBlastのアプリ(Blast Mobile)からは、本体へ直接は引き出せず、いったん普通のウォレットに送ってから引き出す流れです。
手順書は、本体の側のBlast Mobileのアドレスあてに引き出すと、資金が動かせなくなるおそれがあると注意しています。
当てはまる人は、公式の手順書を開いて、その手順どおりに進めてください。
「チェーンが終わる」と聞くと、イーサリアムやほかのチェーンも急に消えるのではと心配になるかもしれません。
ここでは、今回の2つについて、運営が挙げた理由を見ます。
Blastは、チェーンを動かし続ける費用が、チェーンから得られる収入を上回っていて、採算が取れる見込みが立たないと説明しています。
Abstractは、ゲームやNFTなどの一般の利用者向けに絞ったチェーンを単独で続けるのは難しかったとしています。
具体的には、お金の貸し借りなどのサービスが育たなかったこと、取引に使えるお金が少なかったことを挙げています。
さらに、大口の参加が少なかったこと、競合と比べて予算が限られていたことも理由にしています。
この2つの理由が、ほかのレイヤー2にもそのまま当てはまるとは言えません。
一方で、運営する会社がいるレイヤー2では、その会社が終了を決めることはあり得ます。
イーサリアム本体は、1つの会社が運営しているわけではなく、世界中の参加者が記録を持ち合って動いています。
今回の2つは、どちらも数週間から2か月あまりの期限を置いて、終了を発表しました。
期限を過ぎたあとのことは、この記事だけでは約束できません。
分かっている範囲を書きます。
Blastは、期限後も引き出せると発表しています。
ただし、いつもの画面は使えず、上級者向けの操作になります(手順は期限までに公開予定)。
Abstractは、期限後は取り出せなくなると発表しています。
次のものは、どちらのチェーンでも、期限後にどうなるかを一律には言えません。
アプリに預けたままのもの、NFTやそのほかのトークン、ほかの会社のブリッジを通して持ち込んだもの、受け取っていない報酬です。
期限後の操作には、本体でのガス代もかかります。
迷ったら、期限内に移しておくのがいちばん確実です。
ニュースを見て気になったら、まず自分の暗号資産がどこにあるかを確かめてみてください。
ウォレットの種類や管理の仕方は、仮想通貨ウォレットの選び方で書いています。
ここからは、仕組みの細かいところを補足します。
BlastやAbstractのように、取引をまとめて処理し、そのデータと結果をイーサリアムに書き込むレイヤー2を「ロールアップ」と呼びます。
ロールアップには、大きく2つの作りがあります。
1つは、書き込んだ結果を「正しい」とみなし、一定の期間に誰も異議を出さなければ確定させる作り(オプティミスティック・ロールアップ)です。
もう1つは、結果が正しいことを数学的な証明と一緒に書き込む作り(ZKロールアップ)です。
Blastの公式の手順書でも、本体の側で証明したあとに1日待ってから受け取る手順になっています。
ただし、L2BEATによると、Blastでは異議を確かめる仕組みがまだ完成していません(次の項目)。
1日待つのは手順の上の決まりで、その間に誤りが必ず見つかって正される、という意味ではありません。
レイヤー2の仕組みを比べて公開しているL2BEATというサイトでは、2つは次のように扱われています。
Blastは、仕組みとしてはオプティミスティック・ロールアップと説明されています。
ただし、異議を確かめる仕組みが完成していないため、一覧では「Other(その他)」に分類されています。
運営への依存の度合いを示す段階(Stage)も、いちばん下の「Stage 0」に届いていません。
Abstractは、ZKロールアップで、Stage 0と評価されています。
ロールアップの結果をイーサリアムに書き込む役を「提案者(プロポーザー)」と呼びます。
L2BEATによると、BlastとAbstractでは、許可された提案者だけが書き込めるため、提案者が止まると引き出しが凍結し得るとされています。
チェーンによっては、提案者を置き換えられる作りや、誰でも提案できる作りもあり、すべてのレイヤー2が同じではありません。
また、Abstractでは、利用者がイーサリアムの側の受付(キュー)に取引を送ることはできます。
ただし、取引を並べる役(シーケンサー)がキューを処理しなければ、取り込ませることは強制できないとされています。
Blastの公式の手順書では、ETHの引き出しは次の4段階です。
まず、Blastのブリッジの画面で引き出しを始めます。
最大1時間ほど待ってから、イーサリアム本体の側で引き出しを証明する操作をします。
そのあと、1日待ちます(手順書では異議を待つ期間と説明されています)。
最後に、イーサリアム本体の側で受け取る操作をすると、同じアドレスにETHが届きます。
Blastの公式の手順書が扱っているのは、ETH・WETH・USDB・BLASTの4つです。
USDBはBlast独自のステーブルコイン(1ドルなどに価値を合わせた暗号資産)で、本体ではDAIという別のステーブルコインで受け取ります。
USDBは、受け取るまでの操作が1回多く、さらに最大1日ほどかかります。
WETH(ETHをほかのトークンと同じ形で扱えるようにしたもの)は、先にETHに戻してから引き出すよう案内されています。
NFTやそのほかのトークンは、この手順書の対象に入っていません。
手順書は、メタマスクのような普通のウォレット向けです。
複数人で管理するウォレットなど、契約(プログラム)でできたウォレットは、ブリッジのサイトからは引き出せないとされ、別の手順が用意されています。
Blast Mobileからは、Blastの上でいったん普通のウォレットに送り、そのウォレットで引き出す流れです。
本記事はレイヤー2の終了と資産の移し方に関する情報提供を目的としたものであり、特定のチェーン・ウォレット・取引所・ブリッジの利用や、暗号資産の購入・売却を推奨したり、投資を勧誘したりするものではありません。期限や手順は各チェーンの運営が変更することがあるため、操作する前に必ず公式の案内をご確認ください。暗号資産は価格変動が大きく、元本は保証されていません。投資の判断はご自身の責任で行ってください。記載内容は執筆時点(2026年10月13日)で確認できた情報にもとづいており、その後の状況の変化を反映していない場合があります。
この記事は まず知る.com 編集部(運営:合同会社東洋DEX)が書いています。運営者と編集方針